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August 19 昔のサンフランシスコのユダヤ人の少女時代 (1) A Jewish Girlhood in Old San Francisco [本・読み物 reading books]

August 19, 2008 (Tuesday)

    この本は、アメリカに来て最初のころに注文した本で、もしかすると最初に届いた本だったかもしれないのですが、読んだのは8月になってからでした。読書日記は購入日記にすると書いたので4月の日付にするのがよいのですが、不明なので、とりあえず、今日の日付にしておきます。

  Harriet Lane Levy, 920 O'Farrell StreetBerkeley: Heyday Books, 1996.  196pp.  ISBN 0-930588-91-6  

  ハリエット・レイン・レヴィ 『オファレル通り920番』 (1947;rpt. 1996)

 920O'FarrellStreet.jpg

(表紙上の写真はlate 1880's 頃というから1867年生まれのHarriet Lane Levy がはたちか20歳を過ぎたころのポートレト)

    サンフランシスコのオファレル通りはGeary のひとつ南の通りですが、 モーリちゃんの小学校にと考えていた Rosa Parks Elementary School があるのが1501 O'Farrell でジャパンタウンの南、Van Ness Avenue の西側ですが、920というとヴァンネス大通りの東側、Polk Streetに出る前のあたりです。

 

 


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  この本は、1850年にプロシアからサンフランシスコに移民してきたユダヤ人Benjamin Levy が1858年にやはりユダヤ人移民であるHenrietta Michelson と結婚して生まれた三姉妹の末娘のHarriet Levy (1867 - 1950) が80歳になった年に出版した回想録で、 1947年に初版がNew York のDoubleday から大版の挿絵入りで出ています。オファレル通りの近所に住んでいた Sarah Samuels が1895 年に結婚したのが、女性作家でかつパリでの芸術家のパトロン(ペイトロネス patroness ですか)として有名なGertrude Stein (1874 - 1946) の長兄のMichael Stein (San Francisco のOmnibus Cable Company の取締役かなんかだった)であったという縁で、やっぱりオファレルの隣人だったAlice B. Toklas (1877 - 1967) と一緒にハリエットはStein たちのいるパリに1907年から住むことになります。American Girls in Paris と呼ぶには年をとり過ぎていたと思いますが、「パリのアメリカ人」であったことは確かです。

  ガートルード・スタインとすぐ上の兄のLeo Stein は1903年からパリに住んでピカソやマチスやらの現代絵画の蒐集を始めているわけですけれど、その前から英国で美術品の収集をレオはやっていたようです。で、そのレオをならうかたちで、弟妹のいるパリへ、1903年に、ケーブル事業をやめた長兄のマイケル・スタイン夫妻(と子供のAllan Stein) もサンフランシスコからやってきて、現代絵画を買い漁ります。買いあさるというのはなんだけど、しかしやっぱり金持ちのユダヤ人が渉猟したのだよ。

  ハリエットの家も金持ちでしたけれど、両親ともポーランド系ユダヤ人だったので、ドイツ系のユダヤ人より劣るという意識を持っています――"That the Baiern (Bavarian or German Jews) were superior to us, we knew.  We took our position as the denominator takes its stand under the horizontal line.  On the social counter the price tag 'Polack' confessed second-class."  このへんの歴史的背景としては、プロシアによる1772年のポーランド併合によってプロシア支配下にはいったユダヤ人たちが、ドイツ文化に同化しないで東ヨーロッパのポーランド文化に固執したために"Polack" と呼ばれて、それに対して文化的同化が高かったドイツ系ユダヤ人たちは自らを知的にも文化的にもsuperior と考えてきた、という事情があります。そしてハリエットは親の出身を偽ったりもする――"Were I asked in the schoolroom the birthplace of my mother or father, in an agony of fear lest the truth be detected, I quickly answered, 'Germany.'"

  本は 1. The Bay Window  2. Neighbors  3. Bins and Babies  4. Mother  5. Father  6. Education  7.  The Parlor  8.  The Music Room  9. The Dining Room  10. The Front Bedroom  11. The Back Bedroom  12. The Kitchen  13. The Basement  14. Suitors--Baiern  15. Wedding  16. Rosh Hashona [ローシュ・ハッシュナ=ユダヤの新年祭]  17. The Synagogue  18. Saturday Night  19. The Earthquake の19章からなっていて、 多くの章のタイトルは建物にかかわっています。このオファレル920番の家は、著者が最後の「地震」の章で"I identified myself with the old house" と語るように、自己と同一化された存在になっていた。けれども1906年の地震で家は崩壊してしまいます。もっとも、その前に、家族が減り、父親も亡くなり、母と二人になったときにこの家を貸しに出すことにして引っ越してはいるのですけれど。でも少女時代には一心同体であった(ほんとかい)家について、その家にいた人々、近隣の人々、について、ヴィクトリア時代のサンフランシスコについて、ときにユーモアとたぶん皮肉もまじえて描かれています。

   "A Jewish Girlhood in Old San Francisco" という副題みたいに表紙にくっついているフレーズは、調べてみると初版にはなくて、どうやらこのペーパーバックでいわば帯的に付けられたもののようです(アマゾンとかだと副題扱いしているけれど、正式には副題ではない)。18章の「土曜の夜」はいつも父親とふたりで土曜の夜にMarket Street を散策するようすが書かれていますが、ある夜、男の肩に手を置いて引きとめようとする若い女の姿を見て、家に帰ってからもそのイメジが消えない、みたいな思春期の女の子ふうなエピソードが書かれていますけれど、最終章の地震は1906年のことですし、その前に父親は亡くなって(おそらく19世紀の終わりごろに)ますし、少女時代(だけ)が書かれているわけではないです。もっとも、ハリエット・レヴィは、ユダヤ人社会内での結婚という因習的選択を自らやめてひとりで充実した人生を送ることを決意した女性のひとりだったので、ぜんぜん皮肉ではなくてガールだったかもしらんのだが。

   実は本の中では何年のこととか何歳のこととかぜんぜん書かれていないので、時間の経過がよくわからんところがあります。アリス・B・トクラスのことが書かれているのは2章の「隣人たち」で、お隣のLevison 家で、女であること(femininity いまふうには女性性ですかw)を否定されて家政婦としてこきつかわれている女の子として出てくる。――

  Alice Toklas, the granddaughter of Mr. Levison, was a strange note on the Levison canvas.  When her mother died at an early age, her father brought twenty-year-old Alice to the grandfather's home at 922 O'Farrell Street,and dropped her and his responsibility for her among the aggregation of family relatives.

   Among the ever-present, shifting group, Alice remained the only woman there.  In spite of her youth she existed to them only as a housekeeper, provider of food and of general comfort.  Any opinion that she might venture at table was ignored or sponged out by a laugh from the distinguished attorney from the interior.  Each night she sat at the long table, unnoticed among the repetition of relatives.  Her strange, austere beauty passed over them unsuspected.  Alice was odd, they said, and forgot her.  Unnoticed she fled the after-dinner, cigar-laden talk of local politics, and recovered her identity among congenial circles within the pages of Henry James.

   読んだときには生まれ年とか調べてなかったのですが、21歳というと1898年ごろですか。そうするとハリエットは31歳か。人については書きながら時間がずっとあとまで伸びたりするんでしょうね。

   アリス・B・トクラス (この人もユダヤ人女性です)とハリエット・レヴィの関係はどういうものだったのか、よくわからないですけれど、この本の中では "At no time did she invite me to her house.  A knock at my window and a bouquet of flowers passed from her hand into mine and she was gone."(家に私を招くということは一度もなかった。私の部屋の窓を叩く音がして、花束が彼女の手から私の手に渡され、彼女はいなくなっていた) とか唐突に書かれていたりします。あと、アリスは毎年春の2週間、家を抜けだして衣服も変えて派手な格好をしてMonterey に旅行しますが、ある年にはハリエットが同行します。――

One spring we went to Monterey together and lived for a week at Sherman's Rose 〔シャーマン将軍のフィアンセだったという噂のあるSenorita Bonifacio という女性の住む家〕 . The last night of our visit we celebrated with a dinner to each other at Louis's French restaurant. A porterhouse steak, a double order of French-fried potatoes, a bottle of champagne, and we snapped our fingers at grandfathers, uncles, German cousins, and all the impedimenta of life, liberty, and the pursuit of happiness.  I begged for a toast.

  最後の前の "all the impedimenta of life, liberty, and the pursuit of happiness" は「人生や自由や幸福の追求を邪魔するものすべてを(パチンと指を鳴らして消し去った)」というような意味だと思います。

  1906年にサンフランシスコ地震が起こり、そのニュースを聞いてサンフランシスコへフランスからマイケル・スタインたちが戻ってきます。このときにマチスの絵が初めて大西洋を渡ったのだということになっています。で、ハリエットはアリス・B・トクラスとアリスのいとこのAnnette Rosenshine という女性と一緒にマチスの絵を見に行きます(これは本に書かれていることではないです)。そのときにセイラ(マイケル・スタインと1895年に結婚した元隣人の女性です)から、一緒にパリへ行かないか、とハリエットとアリスは誘われることになります。ふたりは議論する。セイラみたいないばりんぼうと一緒というのはふたりともイヤでした。それでも、パリの窓辺に座って生活を眺めているだけでも、サンフランシスコに埋もれるよりいいんじゃないの、とアリスは言います。でもアリスには借金がありました。ハリエットには1000ドルの貯金があったので、それをアリスに貸す。で、ふたりは1907年9月8日にフランスに到着します。

  そして着いたその日にアリスを連れてガートルード・スタインたちを訪問します。

   とこのへんまで書きながら、あれこれ読んでいたのですが(ほんとうは読みながら書き、書きながら読んでいたのですが)、日本語版ウィキペディアの「ガートルード・スタイン」はおおむね英語版の訳でしかないみたいですが、よくわからないところがあり、 別の記事で検討します(笑)。

  日本語のウィキペディアにハリエット・レヴィの項目はないですが、英語のWikipedia のWikimediaにはありました。

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reference URLs:

"Harriet Lane Levy," Wikipedia <https://secure.wikimedia.org/wikipedia/en/wiki/Harriet_Lane_Levy>

"Gertrude Stein," Wikipedia <https://secure.wikimedia.org/wikipedia/en/wiki/Gertrude_Stein>

"Alice B. Toklas," Wikipedia <https://secure.wikimedia.org/wikipedia/en/wiki/Alice_B._Toklas>

"Alice B. Toklas Life Stories, Books, & Links"  <http://www.todayinliterature.com/biography/alice.b.toklas.asp>

「ガートルード・スタイン」 Wikipedia <http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3>

HarrietLevy&AliceToklas,Fiesole,Italy1909.jpg

 Harriet Levy and Alice B. Toklas, Fiesole, Italy, 1909 〔部分。本書100ページと101ページのあいだのアルバムに収録〕

   このハリエットとアリスの写真を撮ったのが、マティスの絵を一緒に見に行ったAnnette Rosenshineなのかどうか、わかりませんが、UC Berkeley のバンクロフト・ライブラリーの"the Annette Rosenshine Papers [graphic], ca. 1895-ca. 1960" に入っています。

"Guide to the Photographs from the Annette Rosenshine Papers [graphic], ca. 1895-ca. 1960" <http://content.cdlib.org/view?docId=tf367nb064&chunk.id=dsc-1.3.4&brand=oac>

"Annette Rosenshine - Artist, Art - Annette (Miss) Rosenshine" <http://www.askart.com/askart/r/annette_miss_rosenshine/annette_miss_rosenshine.aspx> 〔AskART: The Artists' Bluebook 内。生没年を 1880 - 1971 としています。彼女が一番若かったのですね。彫刻家で、やはりパリに渡っているのです。以下の記事が引用されています〕

The sculptress known for her work in miniature, Annette Rosenshine, was born in San Francisco in 1880. She studied at the Mark Hopkins Institute in San Francisco, and most notably, with Henri Matisse in Paris. The Mark Hopkins Institute was established in a mansion on Nob Hill in February 1893, by Mr. Edward F. Searles, who donated the Hopkins Mansion to the University of California in trust for the San Francisco Art Institute. 

 

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なぜか2010年4月20日に追記――

つづきは「August 22 ハリエットとアリスとガートルード――昔のサンフランシスコのユダヤ人の少女時代 (2)、またはパリのアメリカ娘たち Harriet, Alice, and Gertrude: A Jewish Girlhood in Old San Francisco (2); or, American Girls in Paris」です。


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