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October 21 『ファニー・フェース』 (1927) のプロット III ――ミュージカルの歌詞というもの(下の3)――アイラ・ガーシュウィンの「ス・ワンダフル」 (6)  On Musical Lyrics: " 'S Wonderful" by Ira Gershwin (6) [歌・詩]

October 21, 2008 (Tuesday)

funnyface.jpg Funny Face (1957)

これまでの流れ――

September 15 アイラ・ガーシュウィンの「ス・ワンダフル」 (1)  " 'S Wonderful" by Ira Gershwin (1)にはじまる September 26 アイラ・ガーシュウィンの「ス・ワンダフル」 (1 1/3)  " 'S Wonderful" by Ira Gershwin (1 1/3) の3分の1つづきのSeptember 27 アイラ・ガーシュウィンの「ス・ワンダフル」 (1 2/3)  " 'S Wonderful" by Ira Gershwin (1 2/3)の3分の1つづきのOctober 3, September 30 アイラ・ガーシュウィンの「ス・ワンダフル」 (2)  " 'S Wonderful" by Ira Gershwin (2)のつづきの October 4 ミュージカルの歌詞というもの(上)――アイラ・ガーシュウィンの「ス・ワンダフル」 (3)  On Musical Lyrics: " 'S Wonderful" by Ira Gershwin (3) のつづきのOctober 8, 19 『ファニー・フェース』 (1927) のプロット I ――ミュージカルの歌詞というもの(下の1)――アイラ・ガーシュウィンの「ス・ワンダフル」 (4)  On Musical Lyrics: " 'S Wonderful" by Ira Gershwin (4)のつづきの October 20 『ファニー・フェース』 (1927) のプロット II ――ミュージカルの歌詞というもの(下の2)――アイラ・ガーシュウィンの「ス・ワンダフル」 (5)  On Musical Lyrics: " 'S Wonderful" by Ira Gershwin (5)

のつづきです。 

FunnyFace(1927).jpg Funny Face (1927)

    フランキー(Adele Astaire) は有名な飛行機乗りである知り合い(であり憧れの対象であるらしい)Peter Thurston ピーター・サーストン(Allen Kearns) に、その夜(保護者のジミーの誕生日パーティーの夜です)部屋に忍び入って金庫から日記の入った封筒を盗みだしてもらうように説き伏せます。署名を強制された書類が入っているのだ、と得意のウソをついて。このかんにふたりは急速に親密になる["He Loves and She Loves"――フランキーとピーターの歌――実は、ややこしいことにComplete Lyrics はここに "'S Wonderful" を置いているのですが、別の資料の推測に従います。ついでながら、tryout ではここに "How Long Has This Been Going On?" が置かれていたと考えられます]。"He Loves and She Loves" はプレ・ブロードウェイのtryout の最終週、つまりWilmingtonで付け加えられた曲です。この曲は、前に書いたように、ロンドン公演では "Imagination" というJoseph Meyer と Roger Wolfe Kahn の曲に勝手に変わっちゃうのですけれど、トリもハチもみんな恋してるんだから私たちも恋しましょ、みたいな脳天気な、そういう意味で恋の始まりの歌ですから、やっぱここでしょう。ただ、verse 1 の "[Peter:] If the human race is / Full of happy faces― /[Frankie:] It's because they all love / That wondrous thing they call love." と verse 2 の冒頭の "[Frankie:] Feel a funny feeling" そして最後の "[Peter:] From now on, we're in clover" という歌詞は、一方で "funny face" と響き合い、もう一方で "'S Wonderful" の歌詞と響き合っているように思われます。

  さて、いっぽう、ジミーはドーラのネックレスを封筒に入れて同じ金庫に入れる。 泥棒Chester チェスター(Earl Hampton) とそのヘマな相棒Herbert ハーバート (Victor Moore―役者としてはこっちのほうが上です) が屋敷に侵入して金庫から日記の入ったほうの封筒を盗んで逃げる。いっぽうフランキーがジミーの気をそらしているあいだに["Let's Kiss and Make Up"――フランキーとジミー(とアンサンブル)の歌]、ピーターとダグシーはブレスレットの入ったほうの封筒を盗みだす。(このあとにComplete Lyrics は使われなかった曲 (Unused) として"Come! Come! Come Closer!" というタイトルの歌を入れています、歌詞には"Let's kiss and make up" というフレーズがあり、"Let's Kiss and Make Up"に入れ替わったというか発展したと〈少なくとも歌詞的には)思われる曲です。) そうして第1幕のフィナーレ "Final, Act 1"。別のタイトルが "Come Along, Let's Gamble" で、どうやらバースデー・パーテーの客たちがバクチに走る歌・・・・・・"Come along, let's gamble, / Gamble on the wheel. / Losing, winning, / When it's spinning, / What a thrill you feel!" とテレビ番組の Wheel of Fortune を思わせるような出だしで、主要な役者(principals) が総出演で、部分的にgirls と boys に分かれて対話をする、全40行のセリフ&歌詞でしたが、プレ・ブロードウェイの地方公演tryout で削られていき、最後の8行だけがニューヨークとロンドン公演で使われたのでした。―― "[Ensemble:] Good heavens!  They're gone! / Good heavens!  They're gone! / What an awful mess / Make 'em both confess! / Judging by their looks, / They must be the crooks! / Call the police! / Call the police!" という、ほとんど面白みの感じられぬ部分です。crooks というのはほんとうの泥棒のハーバートとチェスターの2人を指していると思われますが、あるいはピーターとダグシーを(も)指しているのか、もしれません。

  第2幕はニュージャージー州のWapatog 湖畔のCanal Inn における "swim party" で始まります["In the Swim" 女声アンサンブル。別題 "If You Will Take Our Tip"。これは以前のOh, Kay! で使われなかった "The Moon Is on the Sea" を再利用したもの]。 2人組泥棒団と警察の双方に追われるピーター、フランキー、ダグシーは、それぞれ病人、ナース、医者に変装しています。ピーターとフランキーの恋心は高まり["'S Wonderful]、いっぽう医者に扮したダグシーは女の子たちにちょっかいを出す["Tell the Doc"]。浮ついたダグシーと女性たちの歌 "Tell the Doc" は、まあ歌詞を読む限りは滑稽な歌ですが、歌いだしが "I'm a physician whose mission you know― / Deals with the subject of dreams. / I'll burst your troubles like bubbles, for Oh! / No dream is just what it seems. / Bring your dreams to me and I assure you / I'll interprete them―That's how I'll cure you." とフロイト的夢判断的というか夢を解釈する精神科医としてあらわれているところが、時代を反映しているかもしれません。

  ダグシーのガールフレンドだったはずのドーラがピーターに結婚してと迫り、脅迫する(たぶん盗みの件で)。ジミーはもう一人の娘のジューンへの愛を確信する["What Am I Going to Do" ("My One and Only") 歌はジミーとジューン]。ピーターが所有する宝石(ブレスレット)を警察が発見したあと、フランキーは、その朝ピーターと結婚したと嘘の発表をしてドーラの計画をくじく。

  結婚したふりをしてフランキーとピーターはアトランティック・シティーのPaymore Hotel に到着。あとから武器を持った泥棒2人組、ジミー、ダグシー、警察が到着。ホテルの一室に全員が集まって混沌状態。警察署は騒乱鎮圧の部隊を派遣するが、着いてみるとパーティーが開かれている。おそらくここで"Blue Hullabaloo" という、ブロードウェイ前のtryoutで加えられ、ブロードウェイでもまもなく落とされてロンドン公演でも使われなかった曲が歌われた(歌はドーラとジューン)。

  Two Million Dollar Pier という埠頭で、ジミーはフランキーと向かいあう。フランキーは、自分は結婚していない、しかしピーターと婚約しただけだと説明する。ジミーの非難に対してフランキーは "stark staring mad" に怒り、反問する―― "Why not?  Everybody is a cuckoo, these days.  The dumber you talk, the more intelligent everyone thinks you are" ["The Babbitt and the Bromide" ジミーとフランキーの歌。tryoutの最終週にフレッド・アステアの "Nut Dance" (ジョージ・ガーシュウィン作曲のインストゥルメンタル)に替えて入れられた]。 ダグシーとドーラはヨリを戻し、ジミーは泥棒チェスターとハーバートから日記を受け取って告訴を取り下げ、フランキーとピーターの結婚を許す["Finale Ultimo": たぶん2曲で "'S Wonderful""Funny Face"]。

  "'S Wonderful" のフィナーレ・ウルティモで歌われたヴァージョン――

FRANKIE: 'S wonderful!
   PETER: 'S marvelous―
    BOTH:  City hall's in view.
FRANKIE:  'S marriage licence.
   PETER:  'S Niag'ra Falls.
    BOTH:  'S 'appiness for two!
 DUGSIE:   You've made my life so ting-a-lish;
                I'll even overlook your Eng-a-lish.
   JIMMY:   Oh, wedding bells fill the air
                Now that I know you care. 

   "Funny Face" のフィナーレ・ウルティモでのヴァージョンと、さらにその初期のヴァージョン――

Version sung in "Finale Ultimo"
    PETER:  I love your funny face―
FRANKIE: Your sunny, funny face―
    PETER: The news I'm spreading
              About our wedding―
[Enter Dugsie and Dora]
  DUGSIE:  My heart's enlarged
              I'll buy a home and have it charged. 
[Enter Jimmy and June]
    JIMMY: Trouble takes the air;
              We'll be a happy pair.
[Enter Chester and Herbert]
HERBERT: We thank you for our freedom.
               You've saived us from disgrace.
               We love your funny face.

 

Earlier Version of "Finale Ultimo"
     PETER: I love your funny face―
FRANKIE: Your sunny, funny face―
     PETER: The news I'm spreading
              About our wedding―
[Enter Dugsie and Dora]
  DUGSIE:  I feel so tinglish,
               I'll even overlook your English. 
[Enter Jimmy and June]
     JIMMY: Trouble takes the air;
               We'll be a happy pair.
[Enter Chester and other crook]
 CHESTER: For twenty years at Sing Sing,
                My cell I'll have to pace
                And love your funny face.

    "Funny Face" の初期のヴァージョンのほうではダグシー(3人娘のうちのドーラの恋人だけど医者役になって浮気心を出し、それでドーラはピーターに近づくけれども、最後には縒りがもどって結ばれる、その男です)が "I feel so tinglish" と言い(tinglish はリーダーズなどの英和辞典に載っておらず、造語かと思いましたが、OED を引くと載っていました。tingle + ishで "Characterized by tingling, quivering."  用例は1855年の英国の詩人Robert Browning の "For them the panels may thrill, The tempera grow alive and tinglish." の1例だけですが)。「ジンジンする」(山本リンダふう)、「ワクワクする」(中山美穂ふう)、「ゾクゾクする」というような意味だと思います。で、これが捨てられて上のヴァージョンにとってかわり、いっぽうで、"'S Wonderful" のフィナーレ・ウルティモ版に、同じダグシーの歌詞として "You've made my life so ting-a-lish; /  I'll even overlook your Eng-a-lish." が現われます。ここで "you" はやっぱりドーラでしょう。で、ドーラという人がどんな娘なのかよくわからんのだけれど、おそらく孤児であったジミーを引きとって育ててくれた人の実の娘の3姉妹ということだから、フランス人ということはないのだと思われます。ただ、たぶん言葉づかいが悪いとかぐらいかと(tinga-a-lish やEng-a-lishのほうがよっぽどなまっていると思いますが)。あるいは、"'S Wonderful" の女声のverse のフランキーの言葉に典型的に現われているような語尾を略してしまうフラッパーの言葉づかいをドーラも共有しているのかもしれません。

  しかしまた、"'S Wonderful" のほうの "You've made my life so ting-a-lish; / I'll even overlook your Eng-a-lish." は、ドーラの登場が指示されておらず、かつその直前のピーターとフランキーの "'S Niag'ra Falls." "'S 'appiness for two!" といった音の脱落、とりわけhappiness の h 音が(フランス人風に?)落ちているところを見ると、そのふたりの英語へのダグシーの応答と考えるべきなのかも知れません。あ、もしかしてピーターってフランス人なのかしら??  それなら腑(ふ)に落ちる。――いや、それはないですね。それでは全体が不自然になる。"'S Wonderful" みたいな音の脱落がついうつっちゃったのを指摘しているととるのが妥当な気がする。

  いずれにしても、映画『巴里のアメリカ人』の男二人のアメリカ人とフランス人の英語・仏語のかけあいというのとは状況は違うのだけれども、確かに同じ歌詞が1927年の時点で書かれていたということも事実なわけです(このへん「October 4 ミュージカルの歌詞というもの(上)――アイラ・ガーシュウィンの「ス・ワンダフル」 (3)  On Musical Lyrics: " 'S Wonderful" by Ira Gershwin (3)」 で問題にしたことへのひとつの回答です)。

  もうちょっと細かいことと全体的なことを次回に書くつもりです。

  それでは、先月投稿されたばかりのオードリ・ヘップバーンとフレッド・アステアの「ス・ワンダフル」をどうぞ。――


" Audrey Hepburn & Fred Astaire - 'S Wonderful " (2:18) posted by "VaivaU" on September 26, 2008

 


"A Hypermedia Edition of Robert Browning's Old Pictures in Florence" <http://faculty.stonehill.edu/geverett/rb/oldpix.htm> にほん

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2009年初夏日本にて

 その後、メイポールやルネサンスフェアのほうへ話が広がってしまい、ミュージカルの歌詞についてなかなか書けないままに時間が過ぎ、カリフォルニアから日本へ戻りました。いちおう適当なまとめを帰国前に書いたのでしたが――「March 28-29 短い文 (ポーの『マージナリア』から) 付 ミュージカルの歌詞についての雑感 [歌・詩]


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yukitan

はじめまして。
ソネくじ頂いていきます。
by yukitan (2008-10-22 14:15) 

さえとあすみ

訪問&コメントありがとうございます♪
今カリフォルニアは明け方前なんですね。
morichanさんにも不思議な箱でますように(-人ー)
くじ頂いていきますね(^-^*)b
by さえとあすみ (2008-10-22 21:07) 

morichanの父

yukitanさん、はじめまして。これからうかがいます。
さえとあすみさん、やさしいことばをありがとうございます。
by morichanの父 (2008-10-28 00:19) 

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