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January 20-21 メスメリズム(催眠術)とアメリカ (その3)――擬似科学をめぐって(18)  On Pseudosciences (18) [短期集中 擬似科学 Pseudoscience]

January 20, 2009 (Tuesday)
January 21, 2009 (Wednesday)

  書いたものをほとんど推敲しないで吐き出すという下品なことを敢えてしておるのですが、頭のどこかにシコリのように残りつづけているナンカもあって――いや、残り続けるというのは違っていて、たぶん膨らんだり縮んだりしている――それが人間がものを考えたりものを書くということの根っこみたいなものなのかな、と感じている今日この頃です(ただの脳ミソのついた脳幹かもw)。

   前の記事の終わりでこう書きました。――

  直接間接にシャルル・ポワイヤンによって目覚めた人たちのなかに、(1) 時計屋だったけど1838年のメイン州ベルファストでの講演以降2年間ポワイヤンについてまわって術を体得して自ら実演し、やがてシャーマン的な心理治療を行なうようになる Phineas Parkhurst Quimby, 1802-66、(2) ポワイヤンによってメスメリズムにかけられた Stanley Grimes という人によって靴職人の見習いだった18歳のときに術にかけられて透視能力を発現し、やがて『自然の諸原理』 (1847) という一種のベストセラーを書いて1848年以降のスピリチュアリズムの展開を準備した Andrew Jackson Davis, 1826-1910、 (3) 長老派の牧師だったけれど、メスメリズムとスウェデンボルグ主義の一致を信じ、Mesmer and Swedenborg を著し、催眠術の実験を行なって被験者は「高次の意識」に入ることを確信した George Bush, 1786-1859、(4) 伝統的なカルヴィニズムの教説がもっぱら人々の恐怖と不安をもとにして唱えられることに反発し、霊的再生の契機を動物磁気説に求め、"new electrical psychology" を主張したメイン州の説教者の John Bovee Dods, 1795-1872 などいます。

  このリストはずいぶん勝手なものだと反省しました。そもそも「目覚めた」という言い方があいまいです。ただ、同じ記事の前のほうで、「あるいはメスメリズムに感化された人間は、いくつかのカテゴリーにわけられるでしょう。第一に思想的に感化された人間、第二に身体的に感化された人間(被験者)、第三に両方で感化された人間。第一は、まじめに感化される場合と(いくぶんかでも)商売・金儲け(の可能性)として感化される場合があるかもしれません」と書いたところを受けていて、自分が言いたかったのは、目覚めて、こんどは自分が人々に対して働きかける運動を起こした人たちということでした。数で言うと、フツウの人で直接・間接に被験者になって自分もメスメリズムの才能を発揮する人が多かったわけでしょうが、そういうなかで際立った特殊な人として Quimby や Davis がいます。そして自分が被験者にならなくても思想的に共鳴する人ももちろん多くいて、そのなかで医者や牧師が人々への影響という点では大きいということになります。つまり、レジェの言葉を借りれば、「アメリカの最も科学的で著名な人たちからこの説への改宗者 converts を多く出した」ということが大きい。で、そういう点では、クインビー、デイヴィスは、特殊な例外です。そして実は牧師たちというのも特殊であって(だってふつう科学者じゃないから)、しかし聖職者がメスメリズムに関心を寄せたというのが、多分にアメリカ的なところです。いっぽうアンドルー・ジャクソン・デイヴィスなんかは、その後のスピリチュアリズムにおいて、あるいは信仰治療において、貧しい者や女性や社会的弱者が脚光を浴びる、そういう線上にあると思われます。

  で、リストを書きなおせば、医者や学者として、James Stanley Grimes, 1807-1903、Phineas Quimby、John Webster (Harvard 大学の化学の先生)、Joseph Rhodes Buchanan, 1814-89・・・・・・メスメリズムの実験を行なう。牧師として、Sylvanus Cobb (画家のDarius Cobb のお父さん)、Charles Chauncey Burr, 1815-83 (ポーの友人)、Theophilus Fiske、Gibson Smith、John Bovee Dods・・・・・・メスメリズムを実践したり説教を行なったり(参考――Eugene Taylor, Shadow Culture: Psychology and Spirituality in America (Washington, D.C.: Counterpoint, 1999), 107-115、Unitarian Universalist Historical Society (UUHS)の"Spiritualism" のページの牧師のリスト、ephemera:spirithistory.com の "Inducing Trance" のページの"the physicians or scientists who experimented with mesmerism" のリスト・・・・・・しかしフィニアス・クインビーは学者か医者だろうか? のちに医者になるということでしょうか。だったら牧師のほうもそうだったりするかも)。 

  あれこれといろいろな人の文章や伝記を齧り読みしているのですが、いくつか気づいたような気がするところを書き留めておきます。第一に、メスメリズムによるトランスが、ポワイヤンの考えたように重要視されたとして、その契機としてのメスメリズムは次第に必ずしも必然ではなくなっていくように見えます。これはひとつにはデイヴィスのような霊能者がひとりでトランスに入れるようになっていく、というようなパタンと、ふたつには脳(頭部)の刺激とかマッサージ――たとえば、サイコメトリー Psychometry を唱えたことで有名なCincinnati の医学校の先生のジョーゼフ・ブキャナン Joseph Buchanan, 1814-89 は、サイコメトリー発見の前年の1841年にメスメリズムの実験をしていて "spirituality" の部位(骨相学のガル風にいうと器官)を発見したと主張するのですが、ブキャナンは女性被験者の頭を圧迫して、幽霊を見させる実験をやったりします(こわいですねー)――とか、あるいは薬物によるトランスとか(まあ、これはある意味伝統的なものですけれど)、トランスのきっかけが多様になる。1848年に起こるスピリチュアリズムの霊媒トランスへの移行を準備している感じです(つまるところ、トランスこそが重要とされてしまうと、そのもととなると想定されていたメスメリズムなりアニマル・マグネティズムなりへの科学的探究から外れていってもしかたがないところがあります、科学者じゃなければ)。

JosephBuchanan-head.jpg
via "Organ of Spirituality" <http://www.spirithistory.com/buchanan.html>

  第二に(第一と結局つながるのですが)、一方で、「電気」が磁気と並んで、あるいは磁気にとってかわって云々されるようになるように思えます。Nineteenth-Century Origins of Neuroscientific Concepts をまた飛ばし読みしていたのですが、"5.3.  ANIMAL ELECTRICITY, 1800-1838" という節は "5.3.1 Decline of the Concept" (つまりガルヴァニの生体電気の考えが、電池に関してヴォルタにとってかわられたからというのでなく――animal electricity の存在を否定していたヴォルタはやがて有機体からの電気を認めるようになります――、メスマーの動物磁気との連想が悪く働き、19世紀初頭には前世紀のものとして忘れられた。が、自然哲学の伝統のあるドイツではそうではなくて研究がつづけられた、とか書かれています。たとえば Johann Wilhelm Ritter, 1776-1810。しかし、動物電気を信じることが動物磁気を信じること、というふうに誤解される時代だったと。それと、動物電気に関して新たなアイデアや実験の技術が展開されなかったというのが理由として挙げられています。)のあと "5.3.2 Brain as Source of Animal Electricity" で、「動物電気の源としての脳」についての1820年代以降の新たな展開が記述されています<http://books.google.co.jp/books?id=38Sjkp-JlPcC&pg=PA170&vq=Mesmerism&as_brr=3&source=gbs_search_r&cad=0_1#PPA180,M1>。不正確な祖述を避けるべく、科学者による実験等の要約は略しますが、電流測定装置の発達と電気科学の進展にそうように、1830年代、40年代に、脳が電気を発生しているという考え方がいろいろな人によって実験・展開されたようです。

  ここで、ややこしいのは、18~19世紀に、たとえば "electrobiology" は動物磁気(メスメリズム)の用語、"Bioelectricity" は動物電気の用語、"biomagnetism" は動物磁気の用語、みたいな紛らわしさがあるだけでなく、もともとメスメルの唱えた正体不明というより存在自体が不明の動物磁気ではなくて正体があらわれてきた電気への乗り換えが、「科学」ではなくて「擬似科学」のほうで容易に起こるであろうことです。実際アメリカのメスメリストのなかには「電気」を言う人が出てきます。ドッズは「電気的心理学 electrical psychology」を唱えるのですが、なんのことはない、というとなんですけれど、病は体内の電気の流れのバランスが崩れることによって起こる、って電気を磁気流体に変えたら、動物磁気説のまんまやん(というか、だからドッズはメスメリズムなのですが)。

  しかし、よくわからんのは、ブキャナンみたいな医者のメスメリズムへのコミットの仕方です。ブキャナンはサイコメトリーを唱えたいかにも怪しい人として記憶されていますが、脳を切開して電流で実験を行なうということをかなりの数実践しているほんとの医学者です。「催眠」として利用していただけなのか、そのへんがよくわからない。上の頭蓋マップでわかるように、ガルの骨相学をあからさまに思い出させるところもあるのです。逆に、骨相学的(というよりはガル的な脳研究)な探究のためにメスメリズム(動物磁気説というよりは催眠術)が使用されたということでしょうか。

  第三に(第一と結局つながるのですが)、科学というよりは、ひとつには "stage mesmerism" と呼ばれる見世物的、アメリカ的ショービジネス的、な側面を示すと同時に、治療、とりわけ心の治療としてアメリカ人に訴えた、ということです。たとえばクインビーは Lucius Burkmar という、トランスにかかりやすいアシスタントを連れて公開講演を行ない、治癒を行なうのですけれど、観客の中からランダムに病気持ちの人を選んで、催眠状態のバークマーが病気の処方を告げる、それがハーブなんですね。だから、治療なのだけれど、前にホメオパシーについて書いたような〔「January 3-4 ホメオパシーとスウェデンボルグ主義 (上)――擬似科学をめぐって(7)  On Pseudosciences (7)」参照〕、民間療法的な治療の延長上での治療なわけです。ついでに書くと、アメリカではスウェデンボルグの思想がメスメリズムとつながるということもあるわけですが、メスメリズムの全面的展開以前に、それを受け入れる特殊な素地が、少なくとも民衆の側にはあった、ということが言えると思うのです。

  しかし、第四に、宗教や超自然との関係は微妙そうで、牧師たちでも、見霊を物理的・肉体的な刺激に還元する人もいれば、そうでない人もいる。先のクインビーは、ハーブの処方が必ずしも病気と合致しないのに治癒することに気づき、(a) バークマーはテレパシー能力で患者の心を読んでいるのであり、(b) 患者の治癒は提示された治癒法が働くと信じることによるのであり、(c) 患者の信仰体系を変化させることが重要だ、という考えます。これは超科学から擬似科学、最終的に宗教を大事とする、というブレを示すようにも見えますが、動物磁気説からは離れてしまっているようにも思えます。さらに1848年からのスピリチュアリズムの出現によって、人間の霊の問題と死後の霊の問題を複雑にからめながら、トランス自体は、メスメリズムの被験者から交霊会の霊媒にとってかわられて、よりオカルト的な世界へ進んでいった。のでしょうか。

  なんか、さらにまとまりを欠いている気がしますが、これでも考えなおしてふたつの文章をつぎつぎに切り離して先へ送ったのです・・・・・・。(保存したつもりのひとつが今朝しばらく公開になっていました。失礼しました)。

  個人的日記ブログということでご寛恕下さい。


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