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February 6 科学者 Scientist [擬似科学周辺]

February 06, 2009 (Friday)

    1月に買ったMartin Willis という若いイギリス人研究者の Mesmerists, Monsters, and Machines: Science Fiction and the Cultures of Science in the Nineteenth Century 〔メスメリスト、モンスター、マシーン〔m 音で頭韻を踏んでいるw〕――19世紀の科学小説と科学文化〕 (Kent: Kent State UP, 2006) という本を読んでいたら、"scientist" というコトバは1830年代になってようやくつくられた、と書いてありました。

  それで、例によって『オックスフォード英語大辞典』(OED) で確認してみました。 1番の定義は「科学の専門的知識をもった人; 科学的方法を用いる人」というもので、確かに初出は1834年になっていました。そして、その用例の内容はなかなか興味深いものでした。

A person with expert knowledge of a science; a person using scientific methods.   1834 Q. Rev. LI. 59 Science...loses all traces of unity. A curious illustration of this result may be observed in the want of any name by which we can designate the students of the knowledge of the material world collectively. We are informed that this difficulty was felt very oppressively by the members of the British Association for the Advancement of Science, at their meetings...in the last three summers....Philosophers was felt to be too wide and too lofty a term,...; savans was rather assuming,...; some ingenious gentleman proposed that, by analogy with artist, they might form scientist, and added that there could be no scruple in making free with this termination when we have such words as sciolist, economist, and atheist—but this was not generally palatable.  1840 Whewell Philos. Induct. Sci. I. Introd. 113 We need very much a name to describe a cultivator of science in general. I should incline to call him a Scientist.  1840 Blackw. Mag. XLVIII. 273 Leonardo was mentally a seeker after truth—a scientist; Coreggio was an assertor of truth—an artist.  1853 F. Hall in Leslie's Misc. II. 169 Atrabilious scientists.  1878 T. Sinclair Mount 13 They know that the sun is better where it is than under the scalpel or other instruments of the intense scientists.   

  たぶん『クウォータリー・レヴュー』という雑誌の1834年の51号の59ページ――「科学 (science) は・・・・・・統一性の気配をまったく欠いている。このことを興味深く例証するのは、物質的世界の知識を研究する者を総称して指し示す名前を我々はもたないという事実だ。英国科学促進協会の会員たちが、過去3年間の夏の大会において、この問題を深刻に受けとめてきたことを我々は知らされている。・・・・・・「フィロソファー philosopher」はあまりに広範で崇高な用語と感じられた・・・・・・「サヴァン savan 〔フランス語起源の savant ("a man of learning or science" の異形。1719年初例〕」はいささか傲慢だ・・・・・・ある思いつきのいい紳士が提案したのが、「アーティスト artist」の類推で「サイエンティスト scientist」をつくったらどうかということで、「サイオリスト sciolist 〔えせ学者、半可通、知ったかぶりの意味〕や「エコノミスト economist」や「エイシィイスト atheist 〔無神論者〕」といった言葉があるからこの接尾辞をつけるのに気がとがめることもありえない、とその紳士は付け加えた――が、この言葉が会員全員の嗜好にあうということはなかった」

   最後のところよくわかりませんが、たぶんその科学促進協会とかいうものが総じてこのscientist なる語をよし、とする合意は得られなかったということなのだと思われ。で、つぎの1840年の用例では、「科学の研究者 cultivator of science」をいう名前がぜひとも必要であり、scientist というのがよいと思う、との意見が表明されています。もっとも、このころには既にscientist がある程度ひろく使われていたらしいことが、同年のエディンバラの『ブラックウッズ・マガジン』の用例から知られます――「レオナルドは知的に真理を探究する人であった――これはサイエンティスト(科学者)。コレッジョ〔Correggio が正しいと思われ。晩年のレオナルド・ダヴィンチと活動の時代が重なるイタリアの画家です〕は真理を主張する人であった――これはアーティスト(芸術家)。」

  最初の用例にあるように、物質界を対象とする「知」「学」としてのサイエンス、すなわちフィジックス、あるいは自然科学を実践する人を対象に、コトバが求められたのであるなら、そのコトバをそれ以外の「科学」にあてはめるのは筋違いということにならないでしょうか。はい、なると思います。実際、仮に人文科学や社会科学が「科学」であるとしても、そこで研究している人はフツウは「科学者」とは呼ばれませんし、同じことは英語でさえ言えるのではないでしょうか。であるなら、奇妙なねじれがここで発生していることにならないでしょうか。

  実は、「科学者」と呼ばれる人がやっているのが科学だ、とこのヘンな連載の最初のころ(年の暮れ頃)考えていたのでした。科学的方法を誰であれ、学者であれ一般人であれ、用いるのは自由だけれど、科学者的科学的方法を科学者以外の学者の学問的方法に総じて求めるのはおかしいんじゃないんですか?  (誰にむかって訴えているのでしょうw)

  さて、ついでながら、OED の2番の定義はエディー夫人のクリスチャン・サイエンスの実践者(信者)なのでした。 "Christian Scientist" の略という感じで、通例 S は大文字ですが。1875年の初例はエディー夫人そのひとの著作『科学と健康──付聖書の鍵 Science and Health with Key to the Scriptures 』 (1875) より。これは1879年に The Church of Christ, Scientist が設立されてクリスチャン・サイエンスが創始される前の本ですが、クリスチャン・サイエンスにおいて聖書と並ぶ聖典です。ふたつめとみっつめの用例は作家サミュエル・クレメンズ(「マーク・トウェイン」)のものですが、なんで近い時期(1902年と1903年)からふたつも採用しているのでしょう。これは1907年に『クリスチャン・サイエンス』という単行本で刊行される前の雑誌連載時のものなのですが。マーク・トウェインは、当然、クリスチャン・サイエンスのおかしさを諷刺するわけですけれど、強い関心ゆえのふるまいと考えることがもちろんできます。

   2. (Usu. with capital initial.) A Christian Scientist.

   1875 M. B. Eddy Science & Health viii. 428 The Scientist sees more clearly the cause of disease in mind, than the anatomist can in body; the latter examines the body to learn how matter is committing suicide, and the former reads the mind to find what beliefs are destroying the body.  1902 ‘Mark Twain’ in N. Amer. Rev. CLXXV. 763 Where can you purchase it, at any outlay of any sort, in any Church or out of it, except the Scientist's?  1903 I in Ibid. CLXXVI. 509 The Scientist hastened to Concord and told Mrs. Eddy what a disastrous mistake had been made.  1938 M. Muggeridge In Valley of this Restless Mind ii. 8 ‘There's a Congregational Chapel...and a Church of England third on the right.’... ‘Do many people go to them?’ ‘Not many, I think.... We're Scientists.’  1980 Country Life 17 July 243/1 There is the dowager, American...a Scientist (of the Christian kind).  

    しかし・・・・・・擬似科学周辺で科学について書くのは愉快なりねー。キテレツなりにほんブログ村 英語ブログへ

Christian science, with notes containing corrections to date (1907) <http://www.archive.org/details/christianscience00twaiuoft> 〔マーク・トウェインの『クリスチャン・サイエンス』のニューヨークのハーパー社初版のInternet Archive のファイル〕 

Christian Science by Mark Twain @ Classic Reader <http://www.classicreader.com/book/1286/>  〔E-text〕

Project Gutenberg の E-text in Internet Archive <http://www.archive.org/details/christianscience03187gut> 

「クリスチャン・サイエンス」 <http://park8.wakwak.com/~kasa/Religion/christianscience.html> 〔『新興宗教を考察するページ』内〕

the MARY BAKER EDDY library <http://www.marybakereddylibrary.org/>


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