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December 27-28 擬似科学をめぐって(1) イントロふうに  On Pseudosciences (1) [短期集中 擬似科学 Pseudoscience]

December 27, 2008 (Saturday)
December 28, 2008 (Sunday)

   ると、この2ヶ月くらい、ある事情(作詞 安井かずみ)があって擬似科学についてあれこれと考えていて、せっかくブログがあるのだから、書いてみようかという気がこの数日高まってきました。インターネットは小学生も見るのだから小学生にもわかるような言葉づかいで書かねばダメだとかいうバカな理屈はハナからハナで笑ってうっちゃってきたとはいえ、人に読んでもらうからには誰にもわかるような言葉づかいで書かねばダメだという理屈は、ちょっとときどきプラスにもマイナスにもひっかかりますけれど、誰にもわかることだったら敢えて自分が書くことはないし、自分にもわからないことを書けるからブログの意味があるような気もするし、どうせ自分がいちばんの読者なのだから、「ウソは書かない」ということだけを新庄に、いや真丈に(Ebichan かよ)、いや信条に、いや身上に、思考のincubine いやincubus いやincubator としてのブログという側面をちょっと展開してみるのもいいかなーと。(以上で前説おわり)

  ウィキペディアの日本語の「疑似科学」英語の "Pseudoscience" も、歴史的な説明はいちおうあるけれども、関心は主として同時代的な感じがします。いわゆるソーカル事件やらナンタラ水の商売問題とか、WEB上でもなじみの(?)出来事が学界や社会で起こっている現代ですから、まあわかりますけれど、自分の関心はカール・ポッパーが擬似科学を定義して云々という20世紀の科学哲学的状況の前の、19世紀前半の1830年代40年代に爆発的にアメリカで流行った、メスメリズム(催眠術)や動物磁気説や骨相学や観相術やホメオパシー(同種療法)など、のちに擬似科学とされることとなったもろもろの運動・理論・思想・技術にあります。個人的専門でいうと、アメリカの作家のホーソンやポーやメルヴィルたちが影響を受けた擬似科学。

  たとえば、とたとえを出すと本題に入ってしまってハナシが重たくなりそうなので、画像でいきますが、マーガレット・フラー 〔この日本語ウィキペディアの断片的な記述なら、こっち(「[PDF] <実際の例> フラーのフェミニスト言説をめぐって」)の福岡撫子(誰でしょう)さんの断片のほうがまだまとも〕という、フェミニズムのハシリのような人がいて、文学サークルにも交わっていたのですが、彼女の有名な記念碑的著作『19世紀の女性』(1845年)の扉にはつぎのような挿絵が入ってました。――

Frontispiece_MargaretFuller_WomenintheNineteenthCentury (1845).jpgこれだけクリックでかなり拡大
Frontispiece to Women in the Nineteenth Century (1845)

  これは、このブログでも何度か言及した自らの尾を食う宇宙ヘビ、ウロボロスですね。で、これのどこが擬似科学なんだ、と言われれば、別に擬似科学ではないんです。が、メスメリズムに関心をもっていたことで知られるフラーは、前々年の1843年にボストンで出版されたThe History and Philosophy of Animal Magnetism by "A Practical Magnetizer" という本を目にしていた可能性があります。この『動物磁気説の歴史と哲学』という作者不詳の本の最後にはつぎの図版が載っていました。――

ClosingImage_TheHistoryandPhilosophyofAnimalMagnetism(1843).jpg
The History and Philosophy of Animal Magnetism (Boston, 1843)

   ヘビの向きが逆ですが、ウロボロスのなかに太陽のようでもあり目のようでもある TRUTH が(フラーのように六芒星みたいなふたつではなくてひとつの三角形のなかに入って描かれています。そしておそらくメスメリズムの術を支えるものとしてFAITH, POWER, WILL の三つの相が三角形を成している。その中心からのrays は、フラーの絵では宇宙ヘビの外側まで伸びているようです。

  もうひとつ、1844年7月13日にフラーがエマソンに送った手紙に載っていたらしい "Serpent, triangle, and rays" の絵のもとになった、フラーの日記に登場する自筆のスケッチ――

DoubleTriangle,SerpentandRays_MargaretFuller (1844journal).jpg

"Double Triangle, Serpent and Rays" (July 1844 Journal)

   これは、ウロボロスの向きが1843年の本と同じです(細かいw)。ray は外でだけ発光(?)しているようです。

  さて、フラーはデザインをパクッたんじゃないの、というのが主眼ではなく、神秘学的な伝統的なイメジが、同じ時代の著作に変奏的にあらわれ、その理由がどうやら思想的に通底しあうものをもっていた(あるいは通じると考える人たちがいた)からだ、というところに興味があります。

  ソーカル事件については、山形浩生のWebサイトをあれこれ読んでいたときに、おくればせに勉強しました。事件ののちの1997年にアラン・ソーカルはジャン・ブリクモンと共著で『知の欺瞞〔知的詐欺〕』を出版して、ジャック・ラカンジュリア・クリステヴァジャン・ボードリヤールジル・ドゥルーズフェリックス・ガタリ といったフランスを中心としたポストモダン思想家における自然科学用語のランヨウを指摘し、それはそれでもっともなところもなきにしもあらずだと思われます。

  しかし、ラカンやクリステヴァらの象徴界やら想像界やらなんたら界という用語には昔から頭が痛いと思っていたモーリちゃんの父でしたが、その後、そもそも精神分析自体がカール・ポッパー以来擬似科学に入れられているという話を知りました。やれやれ。ということでハナシが混乱しないうちに、このへんでイントロはしめておきます。次回、精神分析と心理学の話から入ります。たぶん。

needle-beadx200.png

ウィキペディアの日本語の「疑似科学」英語の "Pseudoscience" 

山形浩生 「『「知」の欺瞞』ローカル戦:浅田彰のクラインの壺をめぐって(というか、浅田式にはめぐらないのだ)」[Asada's Mistake with Klein Bottles] <http://cruel.org/other/asada.html> 〔2000年10月-2002年4月〕

黒木玄「浅田彰のクラインの壺について」 <http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/FN/asada-klein.html> 〔2001年8月。氏のホームページを久しぶりに見たら、今年9月に7年ぶりに更新していました。しかしちょっとリンク切れが多いような・・・・・・〕

黒木玄「『「知」の欺瞞』関連情報」 <http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/FN/> 〔同じく同じ感じ〕

アラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン著 田崎晴明ほか訳 『「知」の欺瞞――ポストモダン思想における科学の濫用』 岩波書店、2000年― ビーケーワン  アマゾン


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